司法書士法人 橋本事務所

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贈与

Donation

今と将来のことを考えて。

贈与とは、自己の財産を無償で誰かに譲ることです。

無償であるため、家族間や親族間といった近親者間で贈与されることがほとんどです。
あげる人ともらう人との合意(契約)で成立しますが、後々の紛争を回避するため、贈与証書や贈与契約書といった書面を残しておくことが一般的です。

2015年に改正された相続税の基礎控除の引き下げにより、相続税対策として「生前贈与」をお考えになる方が増えてきたように感じますが、実際に対策が必要かどうか、具体的に検討してみます。

事例

父・母・子供の3人家族構成で、父が亡くなった場合。
父の財産が4,200万円(内訳:基礎控除3,000万円+法定相続人2人×600万円)以下であれば相続税は課されません(2016年時点)

父名義の財産は、居住用の持ち家と、預貯金少々・・とおっしゃる方であれば、上記の基礎控除内でおさまるのではないでしょうか。
しかし、以下のような事情が加わると、相続税をおさめる可能性も出てきます。

1.父親名義の自宅(持ち家)が地価の高い場所にある

150㎡の土地を所有しており、その土地に面した道路の路線価が20万円であればその土地だけで3,000万円程の課税価格になります。
相続税を計算する上での課税価格は、固定資産税額ではなく路線価ですので注意が必要です。
大都市や政令指定都市等に土地を所有していれば、不動産だけで基礎控除を使い切ってしまう可能性もでてきます。
(※要件にあてはまれば小規模宅地等の特例制度を利用できるので、必ずしも相続税がかかるというわけではありません)

2.父親名義の農地が非農地になる可能性がある

市街化調整区域内の農地は、多くの場合開発を抑制すべき区域として建物の建築が制限されています。そのため土地の評価額も低くなっていますが、近くに幹線道路が通り市街化区域へ変更となった場合、たちまち土地の評価額は高くなります。
このような場合、対象の土地を早めに次の世代へ贈与しておくことも必要でしょう。
(※ただし、農地の名義変更は農地法の許可を得る必要があるので注意が必要です)

3.父親の死亡退職金を相続人が受け取ったが予想以上に多かった

500万円×法定相続人の数の金額は非課税です。
上記の例でいくと、1,000万円までは相続税はかかりませんが、これを超える金額は相続税の課税価格に入ることになります。

4.父親の死亡保険金を相続人が受け取ったが予想以上に多かった

こちらも500万円×法定相続人の数の金額は非課税です。
上記の家族構成で生命保険金を3,000万円受け取った場合、2,000万円は相続税の課税価格に算入されることになります。

5.専業主婦の母親が、父親の給与や年金から自己名義で貯めていた場合

母親名義の預金だからといって、税務署では母親の財産とみてくれるとは限りません。
父親が稼いで得たお金なので、状況によっては父親の財産と判断されます。税務署の調査が入った場合、母親名義の預金は父親の相続財産として課税対象になる可能性もあります。

6.税制改革が行われた場合

超高齢社会に突入し、介護や医療などの社会保障費の増加は著しいものがあります。
その一方で、経済の成熟化によって、かつてのような高い経済成長率が望めなくなったことから、税収は歳出に対して大幅に不足しており、2015年時点で国の歳入の約4割を借金(国債の発行)に頼るという厳しい状況です。
これから先、2015年の改正と同様の相続税の基礎控除を下げるといった税制改革がおこなわれる可能性は否定できません。

以上のようなことから「相続税対策のためには生前贈与の活用を」と促したいところですが、実際には、「小規模宅地の特例」や「配偶者の相続税額軽減」など、相続税の負担が重くならないような措置も設けられています。

ですので、相続税対策としての生前贈与を今すぐに行う必要はないと考えますが、いざ相続が発生した時に慌てないためにも、「相続時精算課税制度」「住宅取得用資金贈与」「暦年贈与」「贈与税の配偶者控除」など、生前贈与の非課税枠をうまく活用し、元気なうちに先々のことに備えておくのも一考の余地があります。

当事務所では、ご依頼者様のご希望をしっかりと聞いた上で、先々発生する可能性のあるデメリットもお話させて頂き、よりベストな方法をご提案させていただきます。
税金に関する部分は、税理士の職域となりますので、ご希望があれば税理士の紹介もさせて頂きます。

登記手続きのみならず、贈与契約書の作成や、農地法の許可、その他必要となる手続を総合的にお手伝いさせていただきますので、是非お気軽にご相談ください。